大理石風の面材が張られた大きな壁面に、展覧会の巨大なパネルが張られている。そのパネルには展覧会のタイトルと共に、ベッドに寝そべりながら両手に持った何かを凝視している男性が夜景が見える窓に映っている様子を移した写真も載っている。

恵比寿にアレック・ソスの展覧会を見に行く。何かの雑誌で見た時にメモしていた写真家だ。雑誌で見た写真は、背景を想像したくなるような、前後の気配が漂うものだった。

展示は6つほどの部屋に分かれて構成されている。部屋を感じさせる写真が、シリーズごとに部屋に分かれているということのようだ。「部屋」ということもあって、静かな写真が多く、一番気に入りそうなものを見せてもらえた気がする。人物がいない写真は、ハンマースホイにも通じる冷やかさがあって、ぞくぞくする。あっさりとした規模の展覧会で、タタっと見れるが、印象は弱く長く残りそうだ。

2部屋目の明るい紺のワーク・ジャケットを来たおじさんがかっこいい。椅子に座っているだけなのに。ひげを伸ばそうかなという気持ちになる。パンフレットにも載っている、子供のポートレート写真を壁に飾っている写真は、ちょっと怖く感じる。行方不明の子供たちを探す団体の事務所に見えてしまう。5部屋目のインコが窓際に留まっている写真が気に入る。外に出たそうに振り返っているところにグッと来たのかもしれない。


やや鈍く光る灰色の正方形で埋まった壁面はやや凹んでいる。その中央には美術館名を英語と日本語で書いた垂れ幕が下がり、右上に愛称である「TOP Museum」をロゴ化したものが縦に配置される。
美術館・北側外観

美術館は外も中も見るべきところはあまりない。写真なので、それもまた良いのかもしれない。館入り口手前の暗さは雰囲気が良く、展示室の明るさも気持ち良い。とてもうまく作った普通のハコモノという感想だ。ロゴは好きだが、外観での縦使いはいただけないと思う。せっかく「ドアをひらくようにも見え」るロゴなのに、縦使いだと上に開く扉になってしまう。

ミュージアム・ショップにアレック・ソスのポストカードがない。少し作って欲しかったと思うが、かなり人気があったようなので、もしかすると売り切れたのかもしれない。いずれにしろ残念だ。ショップの前にアルテックのChair 66とTable 90Aがいっぱいある。リノリウムの手触りが心地良い。これらをどこかで見るたびに、ワークチェアはChair 66にすれば良かったなと思ってしまう。