専用バージョンのウェブサイトとレスポンシブ・ウェブ・デザインによるウェブサイトの優劣が語られることは多い。そういった場合、どちらが優れているのか、またはどちらが劣っているのか、を思想的な面でも技術的な面でも比較される。その過程で両者があたかも排他的な関係であるようによく語られるが、両者が解決するもの、したいものは違う。

単一のHTMLやCSSで完結することや、それに伴うテストの簡略化や不可欠なツールの削減あたりが、レスポンシブ・ウェブ・デザインがもたらす主なものだろう。もしかするとバックエンドとのやりとりもシンプルにできるかもしれない。つまりコードやビジュアル・デザインのレベルではなく、ウェブサイトの構築というレベルにおいてシンプルにしてくれるということだ。

レスポンシブ・ウェブ・デザインは主にこういったコンテンツとウェブページの間における問題を解決するために採用するものだ。

その一方でウェブページとユーザーの間にある問題を解決することはレスポンシブ・ウェブ・デザインではできない。あるユーザーが複数の端末で閲覧した場合に、一貫性ある体験を提供できることに留まるだろう。無意味ではないが、それだけでは不十分だ。このようなウェブページとユーザーの間にある問題は、ビジュアル・デザインよりももう少し上流にあるデザインにおいて解決されるものだ。

専用バージョンのウェブサイトは、まさにこのあたりを解決するために設計し、作るものだ。場合によってはウェブサイトではなくモバイル・アプリになるかもしれない。


少なくとも複数の専用バージョンのウェブサイトを運用する意味はもはやなく、運用や保守におけるコストという点でも魅力的ではないだろう。であるならレスポンシブ・ウェブ・デザインを採用することで、メイン・ターゲット層以外を漸進的にサポートすることは理に適っているはずだ。