ローカルのフォント

少し前にこのウェブサイトがNeue HelveticaまたはCalibriになるように変更した。ウェブ・フォントを普通に使う機会が増えたその反動で、自分のウェブサイトは使いたくなくなる、といったところであまり深い理由は無い。ローカルのフォントだと表示の速さが3倍回しくらいに感じる。初期ページ表示までに特に引っかかりがないようなウェブページだと、コンマ1秒もないウェイトですら影響は大きい。

ウェブ・フォントの表示における技術的な問題は、解決することは難しいことがわかってきた。仕様が不十分なこともあるが、実装が依存している技術に左右され、そこはどうにもしようがなさそうな領域だからだ。HTTPS + HTTP/2でかなり改善する可能性はあるが、ウェブ・フォント用の専用ストレージがブラウザーに実装されない限りは完全には解決できないはずだ。

一方ローカルのフォントにも解決できない問題は多い。そのひとつはもちろんタイプフェイスの選択肢が限られるということだ。他にもプラットフォーム間で統一が取れないこと、それに由来するデザインの崩れを予測することが難しいこと、「見飽きた」という感覚を払しょくすることができないこと、まだまだあるだろう。

ウェブ・フォントが解決するのはまさにここで、そのため重宝され、広まり、根付くことに成功した。ウェブデザインの95%であるところのタイポグラフィー、その20%程を占めるであろうタイプフェイスの選定に大きな変革をもたらしたウェブ・フォントは大きな意味を持つ。

大手ウェブサービスがウェブサイトを取り込む動きは以前からあり、Facebookユーザーにだけ最高の体験を提供しようとするInstant Articlesによりいっそう加速しそうなことは間違いない。キュレーション・ニュースのようなアプリたちが、Flipboardのようにトラフィックをほとんどアプリの外へ持ち出さないようにするのも時間の問題だろう。そこに個のブランドが残ることはなく、取り込まれたコンテンツだけが残る。

こういったインターネットの一部であり大部分における変化がブランディングに割く労力を割に合わないものにするかどうか、これがウェブ・フォントを捨て(諦めるのではなく)ローカルのフォントに戻るかどうかを決定するひとつの要因となる。現状ではそこにもう一つ技術的限界という問題が乗っかっているため、単なる反動もあるだろうが、また少しづつローカルのフォントを利用したウェブサイトが増えてくると考えられる。


僕はローカルのフォントを使うとなると、以下の様な組み合わせにほぼ終わる。

UI向けフォント(Lucida Grande、Segoe UI、Tahomaなど)は、本文で使うと詰まりすぎていて読みづらいので避けたい、となるとこれくらいでまかなうことができる。似通った見た目といったレイアウト上の都合よりも、OSにおいて同じような扱いが想定されていることを主眼に組み合わせている。そのため今はもうArialではなくCalibriを、Times New RomanではなくCambriaを使うことが多い。そうでなければ古き良きCore fonts for the Webを使うだけにしている。

他にもいろいろフォントはあるが、Trebuchet MSなどはもはやComic Sans MSに近い印象を受ける人も多いだろう。OptimaはTrebuchet MSほどではないが、昨今の傾向から考えると本文で使うのは厳しい。Apple GaramondやBodoni、News Gothic MTは良いフォントだが使えない可能性もある。Hoefler TextやGabriolaも同じく良いが、Boldがない。Corbelも悪くはないが、まだサンセリフでオールドスタイルの数字がデフォルトな状況には対応しづらい(font-feature-settingsプロパティーだけではなく、font-variant-numericプロパティーが必要になる)。

また、素晴らしいテキスト・レンダリング環境であるOS XやiOSのために、それら向けのフォント・ファミリー名を優先して指定してやることで、それら向けではないフォントが使われないようにすることも重視している。古くは優先すべきメジャーなWindows向けのフォントを指定することが定石とされていたが、今はもうそういう時代ではなく、ベストにベストを届けられるようにすべきだろう。

最後に一般ファミリー名を忘れないようにすることも日本語を始めとした非ラテン文字言語のウェブページでは大切だ。せっかく各ブラウザーで日本語向けのデフォルト・フォントがメイリオになってきているのに、これを忘れていたら○○○が召喚されてしまう。


ウェブ・フォントはきちんと正しい形で広まったが、顕在化した問題に目をつぶったままであることは否定出来ない。その問題がInstant Articlesのような仕組みによりもたらされる未来を肯定してしまうひとつの理由になっているとも言えるだろう。ここを乗り越えてウェブ・フォントがもう一度花開くためには、その技術的限界を手軽に解決する仕組みが必要になる。

それまではローカルのフォントを使うことで、ウェブサイトのブランディングよりもコンテンツのアクセス性を優先することがまた必要になってくるだろう。