8 Facesというタイポグラフィーの雑誌では毎回インタビューが載っている。そのインタビューで触れられた書体をまとめたTypographer’s typefacesという記事ではGeorgiaやVerdanaを始め、Gotham、FF Scala (Sans)と素晴らしい書体が挙げられている。これらの書体が良いものであることはほぼ疑いがないが、その良さには多少の誤解が含まれるのではないかと感じる。

こういったいわゆるプロフェッショナルに評価が高い書体というものは、全体のクオリティーを引き上げてくれるもの……のように思われるが実際はそうではない。底上げには大いに貢献してくれるが、差し替えたところでその変化はうまく伝わることは少ないだろう。で、あるからこそ軽視されやすいとも言えるし、差し替えるだけで大きく印象が変化する名前を言うことすら憚られるあの書体が濫用されるということでもある。

もうひとつは素人以上プロフェッショナル未満の存在だ。多くのウェブ・デザイナー達はここに含まれる。タイポグラフィーについて長い期間系統立てて学んだウェブ・デザイナーは稀だろう。彼らは当該記事で挙げられた書体が底上げのみを行ってくれることは知っているが、実際にどのように底上げしてくれるかは感覚としてしか理解していない。

ウェブ・フォントとCSS 3の拡充は、このプロフェッショナル未満とプロフェッショナルの間に多くの技術が実装されていくこと、されていることを示している。うちいくつかはNormalize-OpenType.cssのようなライブラリーを通して導入できるが、感覚的な理解だけでは効果的な利用には程遠くなる。それはすなわち書体本来の良さを引き出しきれないということになるだろう。


僕は8 Facesをまだ1冊しか読んだことはないのだけど、すごく面白かった記憶はある。新号が面白かったら集めたい。