最近に限らず、ウェブでは何かと「Content is king」というフレーズが多用されてきた。テーブル・レイアウトの駆逐期にもよく見た記憶がある。今までもこれからもコンテンツが王様で、それがために人はウェブサイトに訪れる、と。15年前ならそれは正しかったような気もするけど、様々なウェブサイトに同じようなコンテンツが散在する現在は、人はウェブサイトそのものを目的として訪れるようになっているように思う。
僕がAmazonを使うのは良い商品が安く売っているからではなく、Amazonなら手軽に買い物ができるからだ。多くの人もそうではないかと思う。ユーザー登録やクレジットカード番号の入力を乗り越えて、1円でも安い別のショッピング・サイトで買おうなどと思う人は稀だろう。また、Amazonに売っていなかったら諦めるなどという人も多いだろう。
ショッピング・サイトのコンテンツであるところの取扱商品とその値段は、既に高評価を下しているウェブサイトを訪れる動機にはなりえても、新たなウェブサイトへの訪問や購入の動機にはあまりならない。それを覆すようなコンテンツを提供すれば良いというのは間違いなく事実ではあるが、その実践はハードルが高過ぎる。
コンテンツはもちろん重要であるけど、絶対王政における王様のようにそれが全てを支配するわけではない。そのコンテンツへのアクセス性や見せ方もウェブサイトの魅力を決定づける要因のひとつだ。そのための手法は時とともに流行り廃りしていくものであるので、シングル・カラムがどうとか、引き出しメニューがどうとかは、コンテンツとトレンドを見据えて選択すれば良い。フラット・デザインも然り。
しかし、コンテンツの重要さをしっかりと意識してデザインする必要はある。ウェブデザインにおいてそれは何かと問うのなら、僕はマークアップだと思う。
ビジュアル・デザインの都合でコンテンツを歪めるのも、コンテンツの都合でビジュアル・デザインを抑えるのも現実的な妥協で、残念ながらそれを避けることは難しい。ウェブデザインにおいてこれが常態化すると、コンテンツとビジュアル・デザインのギャップを埋めるためdiv
要素を多用することになる。そしてクラス名(以下略)。
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要素はエポキシパテのようなもので、整形にはとても便利で重要なもの。だが、その多用は元となるものを歪めてしまう。まず適切にマークアップすることを心がけ、div
要素を必要最小限に抑えることにより、コンテンツの味を活かして魅力的に演出できるのではないだろうか。
これが「コンテント・ファースト」というバズワードが示す世界だったら良いと思うのだけど、「モバイル・ファースト」というバズワードの後継的な位置づけに終わっているような気がする。Media Queriesのクエリーに768px
とか使わない的な。