小さいかもしれないし、大きいかもしれない

人々は何を基準にしてウェブサイトの文字サイズを大きいか小さいか判断しているのだろうか。文字サイズについて扱う記事では、視力や年齢などの生物的な条件や、描画領域や機器そのもののサイズや機器との距離などの物理的な条件が挙げられることが多い。しかし実際には普段よく見るウェブサイトの文字サイズに引きずられる。文字の大小は印象に過ぎず、人は大きさを比較することでその印象を決定しているからだ。

定期的に話題になる「今は文字サイズがこのくらいだと読みやすい」という論理は決定的に成り立つ。目と機器というそれぞれ論理的に分解できるものだけが文字サイズと関係をもつからだ。もしかすると近いうちに目の状態(を反映させた機器の設定)と機器のサイズや重さなどを変数として文字サイズを決定できる数式が出てき、CSSで定義できるようになるかもしれない。

だがそのこととユーザーがどう感じるかは別の問題になってしまう。実際にウェブサイトを読むのは目と機器ではなく、記憶というものを持つ人だからだ。


フルHDの液晶ディスプレイで文字サイズが12pxのウェブサイトばかりを見ている人がいるとしよう。まだインターネットではそういったウェブサイトが支配的だ。そのような人が論理的に読みやすいと言える文字サイズが20から24pxのウェブサイトを見た場合、「読みやすい」という印象より「文字が大きい(大きすぎる)」という印象の方を強く持つだろう。

印象というのは、平均化するわけにもいかないし、特別扱いするわけにもいかない。開発者が持つ印象とデザイナーが持つ印象は食い違うだろうし、それらと営業やクライアント、実際のユーザーが持つ印象も食い違う。印象を決定する記憶に共通点が少ないからだ。どれに従うかとなるとやはりユーザーにしたいし、するべきだろう。

となるとユーザー・テストということになるが、それはそれで難しい。文字サイズについてユーザーに意識させずテストする良い方法を僕は知らない。文字サイズは全体に関わるため、ボタンの色などとは違い、局所的な機能の利用などから判断することはできない。

アンケートのような形をとることは可能だが、印象の言語化は難しく、不正確なものになりやすいだろう。もちろんA/Bテストは可能だが、滞在時間などから読みやすさは量れても印象は量れないのではないだろうか。

過去にリファラーの上位10ウェブサイト(Googleなどは除く)の文字サイズを元に、リデザイン時の文字サイズを決定したことがあるが、これは案外うまく機能した。取り巻く世界から印象を仮定するこういうやり方も悪くはないのかもしれない。


@media (min-width: 908px) {
  html {
    font-size: 18.8px;
  }
}

@media (min-width: 1460px) {
  html {
    font-size: 21.6px;
  }
}

@media (min-width: 1921px) and (min-height: 1081px) {
  html {
    font-size: 1.25vw;
  }
}

今、このウェブサイトではこのようになっている。ウェブログという世界のウェブデザインというグループで支配的なMediumの文字サイズ(基本が18pxで広くなると21px)に寄せたものだ。

日本語は文字の密度が高いので、余白を増やすために1pxくらい大きくしてみたりもしている。加えて描画領域がフルHD以上になるとバンバンでかくするようにした(8Kフルスクリーンだと96pxになるはず)。でかいディスプレイに広い画面でブラウザーがある時にどうすべきか一向にわからない。


ウェブサイトはインターネットにハイパーリンクでつながって存在するものだ。そのことはつまりインターネットを支配している大手ウェブサイトの動向に大きく影響を受けることを意味する。その支配力は強く、ユーザー・レベルにおいては論理的な(科学的な)正しさを破壊することもある。