行動経済学について簡単に書かれた本からの流れで、この本にたどり着いた。「ぼくらはそれでも肉を食う」は、動物の権利運動員や菜食主義者たち、または闘鶏関係者や動物実験をする学者たち、そして普通の人たち、それぞれの動物をめぐる行動について書かれている。読んだ後に若干の生きづらさを感じる。が、忘れるか、目をつぶるだろう。
おおむね動物に対して人が「行動が矛盾している」とか「主張に一貫性がない」という指摘だ。だがそのことを批判するような本ではない。魚を食べる菜食主義者とか、闘鶏と競馬の扱いの違いとか、日本の子供は昆虫をペットにするとか、実験用ネズミが出荷前に半分近く処分されてしまうとか、感情があると思われるチンパンジーを使うより無脳症の乳児を実験に使う議論とか、筆者は寿司が好きになれなかったとか。いろいろと袋小路に追いつめられる事例を読める。あとがきで訳者も書いていたけど、日本以外に昆虫を飼う文化ってないのかな。
読み終えた日の夕飯は豚ロースのショウガ焼きだった。そして今はバーベキュー(豚の丸焼き)を作ったりする本を読んでいる。
行動経済学とは、いわゆる「システム1とシステム2」のあたりでつながる。また、動物に対する態度のところで、いわゆる性差についての汎用的な見解があり、興味深いものだった。何らかの考えを押し付けるような本ではないし、楽しく読める本だと思う。
やはり未来は合成肉がいいのかな。昆虫は食糧危機の解決にはなりそうだけど、だからといってコオロギをプラスチックの箱に閉じ込めて育てる、つまりブロイラーより劣悪な環境で育てることに疑問を持つようになってしまった。昆虫食としては、カイコも繭を取った後の幼虫も食べるというのもニュースで見たけど、人間にはリーズナブルでも、動物(カイコが含まれるなら)にエシカルではなさそうな一方で、皮を剥いだ牛を食べるようなもの、とも言える。なんとかして来たる昆虫食を避けようという意識の、論理的な補強にすぎないかもしれない。
表紙が犬、裏表紙が猫のイラストになっている。描いたのは畑正憲(ムツゴロウ)だそうだ。すごく気に入った(特に目のあたり)ので、展覧会とかあったらぜひ行ってみたい。畑正憲はてっきり死んだと思っていたけど、死んでなかった。