表紙がかっこよかったので借りたはるかなる岸辺という小説を読んだ。中年から老年期に入った女性と、内戦から逃れて難民として他国へ逃げる30前後の男性が主人公で、章ごとに交互に両者の一人称語りで進められる。異国人に対する憎悪、結婚生活の破たん、難民と移民の同一視などが時系列を行ったり来たりしながら描かれていく。舞台となる国の先ごろの大きな決定を考えると、とても興味深い。
ダウンテンポを彷彿させるような雰囲気がある小説で、すごく良かった。原作がどうまでかはよくわからないが、かなり翻訳が優れているのではないかと思う。
政治的な主題については移民や難民を直視していない僕には理解の限度を超えているところは多い。しかし現状に対して庶民がどのような行動をとるのか、そしてそのことを永遠に誰もが学ばないことは理解できた。多分、僕もすぐに忘れてしまうだろう。
借りて良かった本をKindleで買う、というようなことをやっている。紙の本に思い入れはほとんどないのでそうしているが、どうしても表紙には思い入れができる。その場合にはハードカバーで買うことにしている。死ぬまでに表紙が好きな30冊のハードカバーを集めようと思っていて、ようやく5冊めといったところだ。