部屋のみる夢—ボナールからティルマンス、現代の作家まで

暖かい季節になり、少し遠出する。庭園がきれいそうなDIC川村美術館と迷ったが、どうやっても片道3時間近くかかる(乗り換えは1回)のであきらめ、同じく庭園がきれいそうで片道2時間くらいのポーラ美術館に決める。「部屋」をテーマにした展覧会らしく、2年ほど前に見逃したハンマースホイが展示されるようで楽しみだ。

美術館が開館する午前9時くらいに着きたいので、そこそこ早い時間に家を出る。快晴で暖かく、良い一日になりそうだ。前回の箱根はロマンスカーで御殿場経由だった。箱根湯本の方から行くことにしたが、小田急線は箱根湯本行がなくなったので、小田原で降りてバスに乗る。

ホームの床に小田原城のイラストが描かれている
小田原駅

きれいになった小田原駅で初めて降りる。登校と修学旅行の学生が入り乱れており、なかなかにぎやかだ。バス乗り場へは地下街を経由するらしいが、3つくらい「箱根」と付く行先の乗り場がある。ややこしいからか、運転手が一人一人に行き先の確認をしている。

無事、8時過ぎの箱根町港行に乗る。本当はポーラ美術館へ直行するバスが良かったが、ちょっと遅めの時間(8:50発)しかなかったので、二ノ平入口で湿生花園行に乗り継ぐことにした。座席が埋まるくらいで、混んではいない。観光客はみな箱根登山鉄道に乗るのだろう。バスで暑くなって来たので、コートを脱ぐ。少し前に買った大きめのバッグが活躍してうれしい。近所では見ない西武のバスとすれ違ったり、茶色いセブンイレブンやローソンを見たり、箱根に来た気分が高まる。

良く晴れており、青空の中に山の稜線がくっきりと描かれている
強羅

乗り換える二ノ平入口は少し肌寒い。朝の散歩が楽しそうで、3分くらいこのあたりに住みたい気分になる。強羅駅ではバスごと回転して驚く。途中にニコライ・バーグマンの何かがあったが、道からは何も見えない。箱根湿生花園や強羅公園などと一緒に巡ると楽しそうだ。乗り換えてからは20分くらいでポーラ美術館に着いた。


順路はないようなので、念願のハンマースホイから見る。2つだけだが、とても綺麗で、もっと見たく思う。続いてマティスを見る。これだけで来た甲斐があったと感じる。適当にくるくる回ると庭も目に入り、テーマである「部屋」を感じさせるいい展示だ。最後の常設展の見応えもすごい。ただ、展覧会の印象が薄まってしまう気がしないでもないので、先にこちらを見れば良かった。

林の中を上り下りする木造の遊歩道が巡らせてある
遊歩道

展示を見終わった後は、庭の遊歩道を歩く。ゆるやかな傾斜地に広がっているため、ちょくちょく見づらい段差がある。足元をしっかり見ながら、景色や彫刻を見るのは難易度が高く、まんまと足をぐねる。一番外側を歩くと15分くらいだ。鳥とせせらぎの環境音が素晴らしく、昼寝したい。熊注意の看板があるので、永眠してしまうかもしれない。


美術館のカフェやレストランは良さそうだったものの、まだ昼には早いため、庭を見た後は強羅駅までバスで戻る。昼前くらいになったからか、人が増えてきた。駅周辺には相変わらずろくな食べ物屋がない。しょうがないので登山鉄道で箱根湯本へ戻るつもりだったが、ひとつ手前の塔ノ沢駅で降りて、昼ごはんを探しながら散歩する。早川沿いをよろよろ歩くので、風が気持ちいい。

草の生えた斜面に道祖神の祠が埋もれてあり、その横には2体の地蔵が仲良く並んでいる
道祖神

しかし、途中の鯛ごはんをスルーしたら、湯本まで食べ物屋が見つからない。湯本は湯本で木曜定休の店が多いのか、結構閉まっている。ここ数年の観光不況でつぶれただけかもしれない。適当なところで腹に食べ物を入れるも、おいしくない。思い切って富士屋ホテルのレストラン(ドレス・コードがない方)にでも行けば良かった。

満たしたはずの腹が満足しないので、小田原駅で降りて、甘いものを探す。小田原城の方へさまよい、見つけた喫茶店でベイクド・チーズケーキを食べる。エスプレッソも美味しく、大当たりだ。満足したのでロマンスカーで帰路に着く。降りる時にドアが開かなくて焦る。新宿駅でホームドア設置作業中のため、ロマンスカーは一部のドアが全駅で開かないらしい。もうちょっとはっきりとアナウンスして欲しい。