読んでみたかった谷甲州による未完の大作だった「星を創る者たち」を読んだ。ハードSFに分類されるが、どちらかというと未来が舞台のノンフィクションが近いような気がする。「隧道」とか「第三工区」とかいう単語にグッとくる類いの人間なのですごく好きになった。

あまり真面目なSFを読まないので、自転周期とか地球日とかそういう概念の下、地球とは違う環境になることがあやふやなまま、雰囲気で読んだ。それでもグイグイと読めてしまうので、物語としてよくできているということなんだろう。落下するちぎれた係留策の先端が音速を超えて大地を襲う、というようなわかりやすい状況と、無限に押し寄せる砂に生き埋めされつつある、というようなわかりづらい状況など、動静様々な場面が描かれるのも読みやすかった。

先に出た登場人物が、主任から部長に出世してたりすることがわかったところでものすごくテンションが上がった。登場人物がフル・ネームで出てくることが少ないため、よくある名字の同姓としか思わず普通に読み進めていたが、突然同一人物らしいことが判明し、まんまと「おおー」となった。


表紙と各短編のカバー画像もすごく良かった。