Macrotypography。

あなたの記事本文はフォントサイズが小さすぎる(原題: Your Body Text Is Too Small)という記事を読んだ。読める(legible)大きさではなく読みやすい(readable)大きさは、もはや20年以上前から続く伝統の16pxではないのではないかという主張だ。大きくすることの理由において僕の考えとはかなりずれがあった。

16pxだと少し小さいかもしれないというケースも多々あることは確かだ。しかし本文のフォントサイズを大きくすることは描画領域に対してのおさまりの良さを提供するためのものだろう。この記事が載っているMediumのような真ん中寄せ・1カラムのレイアウトで1行の文字数がこれくらいだと、16pxではなんともおさまりが悪い。描画領域が広くなればなるほど、余白と本文カラムのバランスがどんどん崩れていくからだ。

そういう意味で18から21pxくらいにするのは理にかなっている。そうすることで余白のバランスが落ち着き、その結果として本文が読みやすくなるからだ。決して文字が大きいから読みやすいわけではない。この辺りのことはマクロ・タイポグラフィーなどと俗に言われている分野の話だろう。

もうひとつはズームの扱いだ。この記事ではズームを補助的な機能に過ぎず依存するべきではないとしている。しかしズームはもうスクロール並みに低コストで自然に使われる機能なのではないだろうか。デスクトップ・ブラウザーを常に125%で使う人もいるだろうし、小さいなと思ったら自分の好みでサッとズームすることだろう。

またタッチ機器でのマイナスのズームについてはどうだろうか。あるウェブページが本文のフォントサイズを大きくしたとして、ユーザーがそれを大きすぎると感じた場合に小さくする手法がないことになる。ユーザーの選択肢を潰すくらいならば、慣習的な16pxとしておき、ズームしても問題ないように工夫をしておくというのも悪くはないだろう。

TVとの距離やVRなどについても書いているが、このあたりのことはデバイスの種類とスクリーン特性だけでは決まらないので難しい。例えば同じ大きさでも軽いタブレット(読書向け)と重いタブレット(屋外の工事現場向け)では自然と持ち方が違う。そうするとデバイスとの距離や入力に使うものも変わる。この辺りのことはもうちょっと突っ込んだ話を以前書いた。

(増え続ける)こういった多彩さに対して「これは対応、これは非対応」として妥当なデフォルト値を定期的に見直していくのは無理がある。検証と決定を行うコストという点でも、それらを切り分けるために必要な実装という点でも、将来予測が困難という点でも無理だ。


本文のフォントサイズを上げることにはほとんど異論はないが、プライオリティーとしてはレイアウトより低くすべきだろう。コンテンツがレイアウトを決め、レイアウトがフォントサイズを決めるからだ。その際に少しだけメジャーなハードウェアのことを考えて微調整するくらいが安全なのではないだろうか。その微調整においてはこの記事に書かれている最適化手法の2と4、そして5は参考になる。