表紙の豆がおいしそうで、パラパラっと読んだら面白そうだったため、菜飯屋春秋という本を借りた。読んだ後にアスパラガスの卵とじを作って食べた。春になったら絹さやで作ろう。

お惣菜の食べられる喫茶店みたいな店。お酒より煎茶や熱いほうじ茶を出して、ハレのご馳走は無理だけれど、定食屋より、もうちょっとだけ非日常な店にしたい

主人公のこういったセリフがあり、まさにそのような食べ物屋を中心にした小説だった。中でも料理の表現が面白かった。味についてあまり言及せず、食材を扱っていく視点で書かれるのはあまり見ない。読後にこれといって感動に類した何かが残らないようなところも、引用したセリフに通じるところがあるように感じた。

話自体は特に料理の話というわけではなく、主人公と食べ物屋の客などとの関わりが淡々と描かれていくだけだ。それぞれのエピソードはトピックが違い、主人公を通してゆるやかにつながっているだけでそれぞれ独立しているため、短編集のようにも読める。最後にハッピーエンドになりそうな予感のところでスッと終わるところも良かった。


行きつけの店が欲しくなる。