推理小説家としてゆるぎない名声を持つエラリー・クイーンは名義を貸して他の人に書かせた作品、いわゆる外典ものも多く出している。このチェスプレイヤーの密室はそのひとつで、作品の傾向としては中期の「途中の家」からライツヴィル・シリーズあたりのパズル的要素と小説的要素が融合した傑作に通じるところがある。

タイトルからわかる通り密室ものだが、なかなか凝ったトリックで素晴らしかった。解決へ至る手がかりもフェアーなもので、クイーンの系譜といって間違いない。小説的な筋は盛り込みすぎで、ご都合主義なところがあるが、ひどいというほどでもない。

中期の傑作にはやや及ばないが、小説としては退屈なところのある初期国名シリーズとは拮抗する出来と感じた。楽しく一気に読めた。


いわゆる外典と呼ばれているこれらには興味はあったのだが、なにしろ日本語では出版されていなかった。去年発売されたことを知ったのだが、単行本で2500円という価格はちょっと出せなかった。元がペーパーバックということも考えるとなおさらだ。既に他にもいくつか出ているが、大枚はたいて集めてしまいそうな予感がある。

またこの名義貸し作品を担当したジャック・ヴァンスの本も読んでみたい。盲目の作家だそうで、興味深い。D&Dの魔法体系のネタ元の小説も彼が書いたものだそうだ。SFは最近読んでいないのでちょうど良さそうだ。